皆さんは「ハラール(Halal)」 についてご存知でしょうか?
日本ではあまり馴染みのない「ハラール」ですが、マレーシアでは人口の約60%以上がイスラム教徒であり、イスラム教徒にとってハラールは生活の基本です。
飲食だけでなく、日用品、医薬品、化粧品、ファッション、サービス業まで、ハラール対応が求められます。
では、実際にハラールとは何を指しているのか、本日の記事では「マレーシアにおいて重要な「ハラール」の基礎知識について詳しく解説させていただきます。
「ハラール(Halal)」とは
「ハラール」とは、アラビア語で「許されている」「合法な」という意味があり、イスラム教徒が「してよい」とされるあらゆる行動や物事を指します。
多くの場合は食べ物の文脈で使われますが、実際にはもっと広い意味を持っています。以下に詳しく解説させていただきます。
ハラール認証マークとは
マレーシアにおけるハラール認証マーク(Halal Certification Mark)とは、イスラム教の教えに従って「安心して使用・摂取できる製品やサービス」であることを示す公式マークです。
ハラール認証マークは食品や、化粧品、医薬品、施設、サービスなど様々な分野で使用されています。イスラム教はこのマークを基準に食品や製品を選ぶことができます。
食べ物・飲み物に関するハラール
ハラール食品とは、イスラム法に基づいて、イスラム教徒が食べてもよいとされる食べ物、飲み物のことです。具体的にハラールでは禁じられている食べ物の代表的なものを以下にご紹介します。
・豚肉・豚由来の製品(ゼラチンなど)
・アルコールを含む飲料や料理
・正しく処理されていない動物の肉
・死んだ動物(屠殺されずに死んだもの)
・血液(調理済でも不可)
ハラールな食材・食品の条件としては原材料がハラールであることが必要となります。
衣類・化粧品に関するハラール
イスラム教における「ハラール」の概念は、食べ物だけでなく衣類や化粧品といった身体に直接関わるものにも及びます。
衣類に関しては、まず素材の清浄性が重要視されます。たとえば、豚革のジャケットや靴、ベルトなどはイスラム法では不浄(ナジス)とされており、使用が禁じられています。
同様に、牛革や羊革など他の動物から作られた製品であっても、それがイスラムの屠畜方法に従って処理されていない場合は、ハラールとはみなされません。
人工素材(ポリエステルなど)や植物由来素材(綿、麻など)は、ハラールであることが多いため、ムスリムにもよく選ばれています。
衣服のスタイルについても、女性の場合、体のラインを強調せず、髪や体の一部を隠すような服装(ヒジャーブやアバヤなど)を選ぶことが一般的です。男性も、膝からへその間をしっかり覆うことが礼儀とされており、肌の露出が多い服装は避けられます。
化粧品についても同様に、使用される成分がハラールであるかどうかが大きな関心事です。とくに気をつけるべきなのは、豚由来のコラーゲンやグリセリン、アルコール成分です。
イスラム教徒向けに製造された「ハラール認証化粧品」では、これらの成分を避け、製造過程でも不浄なものとの接触を排除するよう管理されています。また、動物由来成分が使用される場合には、その動物がハラールな方法で屠畜されていることも求められます。
金融・ビジネスにおけるハラール
イスラム教は、倫理的で公正な経済活動を非常に重視しており、「ハラールな金融・ビジネス」とは、ただ利益を追求するだけでなく、神の教えに従って健全な形でお金を扱うことを意味します。
最も特徴的なのは、イスラム教における利子(アラビア語で「リバー」)の禁止です。お金を貸して利子を取ること、あるいは支払うことは、神によって禁じられた行為とされています。
さらに、イスラム金融では、ギャンブル性の高い投資や、詐欺的な内容を含む不透明な契約も禁止されています。
酒類、豚肉、タバコ、武器、ポルノ産業など、イスラムの価値観に反するビジネスへの投資も禁じられており、「シャリーア適合ファンド」として、厳しく審査された企業のみが投資対象になります。
このように、金融やビジネスにおけるハラールとは、ただ経済的に成功することではなく、神の教えに基づき、誠実・公正・社会的責任のある方法でお金を稼ぎ使うことを意味しています。
行動や生活習慣におけるハラール
イスラム教では、ハラールの概念は日常生活のあらゆる行動や選択にまで及びます。つまり、「何をするか」「どう振る舞うか」もまた、神に許された行いかどうかで判断されるのです。
イスラム法(シャリーア)では、人間の行動はすべて5つの分類に分けられます:義務(ファルド)、推奨(ムスタハブ)、許容(ムバーフ)、非推奨(マクルー)、禁止(ハラーム)です。
義務に分類されるものは、ムスリムが必ず行わなければならない行動であり、たとえば1日5回の礼拝(サラート)や、ラマダン月の断食(サウム)、喜捨(ザカート)などです。これらは信仰を実践するうえで中心的な行為であり、怠ることは重大な罪とされます。
一方、推奨される行動には、礼拝の後に祈る、貧しい人に寄付をする、困っている人を助けるといった善行が含まれます。これらは必須ではありませんが、実行すれば神の恵みが得られるとされており、積極的に勧められています。
許容される行動(ムバーフ)は、信仰において特に善でも悪でもない中立的な行為です。日常の何気ない選択や趣味など、多くの行動がこのカテゴリに含まれます。
非推奨の行動(マクルー)は、必ずしも罪とはされませんが、避けたほうがよいとされる行動です。たとえば、他人の陰口を言う、無駄に時間を浪費するなどが該当します。
最後に、禁止された行動(ハラーム)は、絶対にしてはならないとされる行為で、たとえば嘘をつく、盗みを働く、殺人、姦淫、飲酒などが含まれます。これらの行為を行うと神の怒りを買い、重大な罪となります。
このように、イスラムにおける「ハラールな生活」とは、ただ清潔なものを食べ、正しい経済活動をするだけではなく、日々の言動や習慣まで含めて、常に神の教えに従って誠実に生きることが求められています。
マレーシアでの生活においてハラールは生活の様々な場面で関わってくる重要なことです。マレーシアに行く機会がある方はハラールの基礎知識を覚えておくことをお勧めします。
以上、本日の記事ではマレーシアにおいて重要なハラールの基礎知識について解説させていただきました。参考にしていただければ幸いです。