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第二言語習得論を知って効率よく英語学習をしよう!

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英語を学んでいる方であれば、誰もが「一日でも早く英語を話せるようになりたい」と考えているのではないでしょうか。あなたは実際に人はどのようなプロセスで母国語以外の言葉を話せるようになるのかについて知っていますか?

 

第二言語を習得するプロセスをしっかり理解することができれば、ただひたすら時間とお金をかけて勉強しているよりも効率的かつ最短で英語を習得できるようになります。

 

そこで、今回は第二言語習得のプロセス」についてご紹介したいと思います。

 

 

 

第二言語習得研究とは

第二言語習得研究(SLA: Second Language Acquisition)とは、母語以外の言語を学ぶ時に、人間がどのようなプロセスで言語を習得していくのかを研究する学問です。言語学神経科学、心理学、社会学などと関わりが深く、専門家によって多様な理論が展開されています。

 

また第二言語を効率よく習得するために、近年、英語のコーチングスクールなどでこの「第二言語習得の研究結果」が活用されています。この記事では言語学者クラッシェンが唱えた第二言語習得に関する5つの仮説」をご紹介させていただきます。

 

 

クラッシェン

第二言語習得研究において最も有名な人物の一人が、言語学者ティーブン・クラッシェン」です。クラッシェン氏は、1970~1980年代にかけて一般にモニターモデルとして知られる第二言語習得に関する5つの有名な仮説」を打ち出しました。

 

 

 

クラッシェンのモニターモデル

クラッシェンが唱えたのは以下の5つの仮説です。ひとつづつ詳しく見ていきましょう。

習得・学習仮説(the Acquisition-learning hypothesis)
自然習得仮説 (the natural order hypothesis)
モニター仮説 (the Monitor hypothesis)
インプット仮説 (the Input hypothesis)
情意フィルター仮説 (the Affective filter hypothesis)

 

 

1. 習得・学習仮説

言語習得は、「習得」「学習」の異なる2つのプロセスで発達するという仮説です。「習得」とは子どもが母語を習得するプロセスに似ており「無意識的に起こるもの」であり、一方「学習」「意識的に行われるもの」であり、学校教育で文法や規則などに関する知識を学ぶことを指しています。

 

また、クラッシェンは「大人も第二言語を習得することは可能である」と主張し、この「習得」の重要性を強調しています。

 

 

 

2. 自然習得仮説

言語の習得には普遍的な順序」があり、ほぼすべての学習者がその順序に沿って言語を習得するという仮説です。

 

クラッシェンは論文の中で学習者は「複数形の”s”」のほうが「所有格の”s”」よりも早く習得されるという主張をしました。

 

 

 

3. モニター仮説

「学習」した言語は発語を「モニター」することにしか有効ではなく、「習得された言語しか発語の能力は持たない」とする仮説です。(モニターを「チェックする」という意味で捉えるとわかりやすいです)

 

クラッシェンは「1. 習得学習仮説」のなかで、第二言語を身につける上では無意識による「習得」と意識による「学習」という二つの異なるプロセスが共存するということを主張しましたが、それぞれが第二言語能力の向上においてどのように機能するのかを説明したのがこのモニター仮説です。

 

クラッシェン氏は「習得こそが第二言語の発話を引き起こすもの」であり、「学習」によって得られた知識は修正する(モニター)機能しか持たないと主張しました。

 

「学習」によって得られた知識は発話の中身を正しい文法や規則に変える場合にのみ機能するもので、それは「習得」による発話が起こった後に使用されるシステムだということです。

 

 

 

4. インプット仮説

インプット仮説は、クラッシェンが第二言語取得において最も重要だと考えた仮説で、学習者の言語能力は現在のレベルよりも僅かに高いレベルのインプットを理解したときに進歩するものであり、この理解可能なインプット(Comprehensible Input)こそが最も大事だというものです。


クラッシェン氏は現在の言語習得レベルを「i」とし、それよりも僅かに高いレベルを「i+1」と表現しました。「+1」とは自然的な順序に沿った次のレベルのことを指します。

 

学習者は現在の能力を大きく超える「i+2」のインプットでも、現在の能力と変わらない「i+0」のインプットでもなく、「i+1」という理解可能なインプットを受け続けることで自然と言語を習得していくと提唱したのです。

 

 

 

5. 情意フィルター仮説

情意フィルター仮説とは、感情的な要因がいかに第二言語習得に影響を及ぼすかを説明した仮説で、具体的には「不安」「自信のなさ」といったネガティブな感情が、言語の習得能力を低下させてしまうというものです。

 

クラッシェン氏は情意フィルター仮説において、第二言語習得の成功に関わる感情として「動機付け」「自信」「不安」の3つを挙げており、「動機」と「自信」はあればあるほど情意フィルターは低くなり言語習得に成功しやすくなる一方で、「不安」が強いと情意フィルターは高くなり、言語習得の妨げとなるとしています。

 

これは英語を勉強したことのある方なら理解できると思います。そもそも英語学習に対する動機付けが弱いとなかなか英語は習得できませんし、「間違ったら恥ずかしい」といった不安感が強いと、うまく英語が話せなくなることが多いです。

 

 

 

いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したクラッシェンの5つの仮説に関しては、他の言語学者からの批判も多くあり、現在の第二言語習得研究においてはクラッシェンの仮説がすべて正しいと考えるのは現実的ではないかもしれません。

 

しかし、英語学習を経験した目線で見ると、納得できる部分が多くあると感じます。英語学習を効率的に進めていく上で、この「第二言語習得理論」を知っておいて損はないと思います。